<街のなりたち―創成川・札幌駅>
理事長 田中 重明
北8条西1丁目は、嘗て石狩湾から鮭も遡上し、船による物流の動脈となった創成川に接し、明治初期の地図でも市街区と認められる歴史のある街です。明治半ばには創成川沿いに石狩と都心を結ぶ石狩街道(国道231号)が完成し、明治末には川向うにあった帝国製麻の工場前から茨戸までの馬車鉄道も開通して、この界隈は札幌・石狩間の物流の要でもありました。そして、北7条・8条の創成川沿いには小さな店が軒を並べた商店街ができ、八条市場とよばれて大きな賑わいをみせました。札幌でも1、2を争う市場だったと、当時を知る地権者の皆さんはよく話題にしたものです。その後、石狩街道が整備されて物流の中心が移り、馬車鉄道は姿を消して、この八条市場もJR函館本線をまたぐ石狩陸橋建設のため昭和30年代半ばにはなくなりました。昭和の終わりには函館本線が高架となり、その陸橋も取り壊されて、現在は都心から高速道路へのアクセス改善をめざした、車道のアンダーパス化が検討されています。周りの景色はめまぐるしく変わりましたが、明治の初めに多くの先人たちの努力で完成した創成川の流れは変わらず、川辺のポプラ並木や緑の土手は、今も自然の潤いをこの地域にもたらしています。
一方、当地区は函館本線により南口の商業地域と分断されていることから、都市機能の発展については南口に大きく遅れ、長らく「駅裏」と揶揄されたエリアでもありました。しかし函館本線が高架となり、北口駅前広場も整備されて交通の便もよくなると、マンションやオフィスが増え、駅前の再開発の波は徐々に広がって、街は大きく変わりました。駅近くにありながら、最も整備の遅れていた当地区も、令和元年6月に第一種市街地再開発事業として札幌市の認可を受け、令和2年7月には工事着工の運びとなりました。勉強会としてスタートして以来30余年、変わらずにご協力頂いた地権者の皆さん、そして長期に渡りこの事業の進展にご尽力・ご支援いただいた札幌市はじめ多くの方々に心より感謝申し上げます。
<新たな街づくり―北口のランドマーク>
私たちはこのような街の歴史も踏まえながら、200万都市札幌の都心部にふさわしい再開発を目指してきました。当地区の西には北口を代表する広大な北大キャンパスが控えています。そしてそれに続く昔からの落ち着いた街並みは、文化のかおり高く知的刺激にあふれる街として、南口とは異なる文化圏を形成してきました。当事業では、一町画の敷地内に、マンション、オフィス、ホテル、駐車場に加え、小劇場(約200席)などを核にしたコンパクトな商業・サービス施設をその中心に計画しています。マンション、オフィス、ホテル、駐車場は駅前という場所にふさわしい都市機能の充実化を図るには必須な施設となりますが、小劇場にはこれらの施設とも連携しつつ、質の高い多様な機能を持たせ、芸術文化活動にも寄与し、来訪・居住する人々に元気と癒しを与え、そして交流の場として街に賑わいをもたらす、これからの街づくりには欠かせない大きな役割が期待されています。
正面入口の開放された吹き抜けのアトリウム空間、敷地内貫通通路の他、外周歩道の連続した公開空地の街路樹は、お隣の合同庁舎の前庭から創成川までを繋いで八条通に緑の帯を作り、住んでいる人や訪れる人々に交流の場、憩いの場を提供いたします。施設は地下通路によって、地下鉄東豊線さっぽろ駅と繋がります。将来は新幹線駅へも直結するこの施設は、昔から北口の持つ高い文化・芸術のポテンシャルと駅の賑わいを結ぶ北口のランドマークとして地域全体の発展にも大きく貢献できるものと信じております。
今後とも皆様のご協力ご支援をお願い致します。
事業経緯
1988年2月 | 再開発研究会設立 |
1991年10月 | 再開発協議会設立 |
2007年2月 | 再開発準備会設立 |
2009年7月 | 再開発準備組合設立 |
2014年8月 | 都市計画決定(北8西1地区第一種市街地再開発事業) |
2017年9月 | 都市計画変更(施設用途変更(医療・福祉→業務、宿泊)) |
2018年12月 | 都市計画変更(地下通路の整備の決定に伴う区域変更) |
2019年6月 | 市街地再開発組合設立認可 |
2019年7月 | 「札幌駅北口8・1地区市街地再開発組合」設立 |
2020年3月 | 権利変換計画認可 |
2020年5月 | 解体工事着手 |
2020年7月 | 本体工事着手 |
2021年7月 | 地下通路新設工事着手 |
2024年1月 | 竣工(予定) |
2024年春 | グランドオープン(予定) |